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交通事故の知恵袋

実況見分調書等の刑事記録の保管期間

■ポイント


1.実況見分調書等が刑事確定訴訟記録に含まれる場合

 

⇒判決の刑種・刑期によって刑事記録の保管期間が異なる。

 

・5年以上10年未満の懲役又は禁錮に処する判決の場合=保管期間は10年

・5年未満の懲役又は禁錮に処する判決の場合=保管期間は5年

・罰金に処する判決の場合=保管期間は3年

・道路交通法違反の罪に係る被告事件についての略式手続等による訴訟の記録であって仮納付の裁判の執行により略式命令又は交通事件即決裁判が確定したときに刑の執行を終えたこととなる事件の場合=保管期間は1年

 

2.実況見分調書等が不起訴記録に含まれる場合

 

⇒罪名(法定刑)・不起訴処分の担当検察官の所属によって保管期間が異なる。

※起算日は、不起訴裁定日

 

・罪名が過失運転致死傷罪の場合(通常の人身事故の場合)=保管期間は5年

・道路交通法違反事件で、かつ、区検察庁の検察官がした不起訴処分に係る場合=保管期間は1年

 

第1 はじめに


実況見分調書や供述調書等の刑事記録を取得したい!とは思ったものの、交通事故はずいぶん昔のこと・・・。そもそも刑事記録は残っているのでしょうか?というご質問をいただくことがありますので、以下刑事記録の保管に関するルールを確認していきたいと思います。

 

※取得方法については、「実況見分調書の取得方法」「供述調書等の実況見分調書以外の刑事記録の取得方法」を参照ください。

 

第2 実況見分調書等の刑事記録の保管期間に関する関連規定

 

1.記録の分類


記録事務規程(最終改正:平成25年3月19日法務省刑総訓第6号〔同年4月1日施行〕)第1条の整理によると、刑事事件関係の記録としては、①刑事確定訴訟記録、②裁判所不提出記録、③不起訴記録、④費用補償請求事件記録及び⑤刑事補償請求事件記録に分類されます。

 

以下、実況見分調書等に関するものとして、①刑事確定訴訟記録、②裁判所不提出記録、③不起訴記録の保管に関する関連規定を確認していきます。

 

2.①刑事確定訴訟記録について

 

刑事確定訴訟記録の保管については、刑事確定訴訟記録法及び刑事確定訴訟記録法施行規則において次のとおり定められています。

 

■法第2

(訴訟の記録の保管)

第二条 刑事被告事件に係る訴訟の記録(犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(平成十二年法律第七十五号)第二十条第一項に規定する和解記録については、その謄本)は、訴訟終結後は、当該被告事件について第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官(以下「保管検察官」という。)が保管するものとする。

2 前項の規定により保管検察官が保管する記録(以下「保管記録」という。)の保管期間は、別表の上欄に掲げる保管記録の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に定めるところによる。

3 保管検察官は、必要があると認めるときは、保管期間を延長することができる。

 

■法別表(第二条関係)及び規則第2条~第4


保管記録の区分 【保管期間】

 

一 裁判書

1 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に処する確定裁判の裁判書 【100年】

2 有期の懲役又は禁錮に処する確定裁判の裁判書 【50年】

3 罰金、拘留若しくは科料に処する確定裁判又は刑を免除する確定裁判の裁判書 【20年。但し、道路交通法〔昭和三十五年法律第百五号〕第八章の罪又は自動車の保管場所の確保等に関する法律〔昭和三十七年法律第百四十五号〕第十七条若しくは第十八条の罪に係る被告事件についての刑事訴訟法〔昭和二十三年法律第百三十一号〕第六編又は交通事件即決裁判手続法〔昭和二十九年法律第百十三号〕に定める手続〔いわゆる「略式手続等」〕による確定裁判の裁判書〔正式裁判の請求があつた事件に係るものを除く。〕は10年】

4 無罪、免訴、公訴棄却又は管轄違いの確定裁判の裁判書

(一) 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係るもの 【15年】

(二) 有期の懲役又は禁錮に当たる罪に係るもの 【5年】

(三) 罰金、拘留又は科料に当たる罪に係るもの 【3年】

5 控訴又は上告の申立てについての確定裁判(1から4までの確定裁判を除く。)の裁判書 【控訴又は上告に係る被告事件についての1から4までの確定裁判の区分に応じて、その裁判の裁判書の保管期間と同じ期間】

6 その他の裁判の裁判書

(一)

(1) 上訴審で破棄された裁判の裁判書 【当該裁判に係る被告事件についての1から4までの確定裁判の区分に応じて、その確定裁判の裁判書の保管期間と同じ期間】

(2) 公訴棄却、控訴棄却又は上告棄却の確定裁判(公訴棄却、控訴棄却又は上告棄却の確定判決を除く。)に係る上訴の申立て(異議申立てを含む。)についての裁判の裁判書 【(1)と同じ】

(3) 判決訂正申立てについての裁判の裁判書 【(1)と同じ】

(二)

(1) 刑の執行猶予の言渡しを取り消す確定裁判の裁判書、刑法(明治四十年法律第四十五号)第五十二条の規定により刑を定める確定裁判の裁判書、刑事訴訟法第五百一条の規定による裁判の解釈を求める申立てについての確定裁判(棄却決定を除く。)の裁判書、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法(昭和三十八年法律第百三十八号)第十三条の規定により没収の裁判を取り消す確定裁判の裁判書又は再審を開始する確定裁判の裁判書 【確定裁判に係る被告事件についての1から4までの確定裁判の区分に応じて、その裁判の裁判書の保管期間が満了するまでの期間】

(2) (1)に掲げる裁判に係る上訴の申立て(異議の申立てを含む。)についての裁判の裁判書 【(1)と同じ】

(三)

(1) 刑事訴訟法第百八十一条第四項、第百八十三条、第百八十四条若しくは少年法第四十五条の三第一項の規定により訴訟費用を負担させる確定裁判の裁判書又は同法第五百条の規定による訴訟費用の負担を命じる裁判の執行の免除の申立てについての確定裁判の裁判書 【5年】

(2) (1)に掲げる裁判に係る上訴の申立て(異議の申立てを含む。)についての裁判の裁判書 【5年】

(四) 非常上告の申立てについての裁判(棄却判決を除く。)の裁判書 【破棄された確定裁判の裁判書又は破棄された訴訟手続に係る確定裁判の裁判書の保管期間が満了するまでの期間】

(五) (一)から(四)までの裁判以外の裁判の裁判書 【当該裁判についての裁判書以外の保管記録の保管期間が満了するまでの期間】

 

二 裁判書以外の保管記録

 

1 刑に処する裁判により終結した被告事件の保管記録

(一) 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に処する裁判に係るもの 【50年】

(二) 二十年を超える有期の懲役又は禁錮に処する裁判に係るもの 【30年】

(三) 十年以上二十年以下の懲役又は禁錮に処する裁判に係るもの 【20年】

(四) 五年以上十年未満の懲役又は禁錮に処する裁判に係るもの 【10年】

(五) 五年未満の懲役又は禁錮に処する裁判に係るもの 【5年】

(六) 罰金、拘留又は科料に処する裁判に係るもの 【3年。但し、道路交通法第八章の罪又は自動車の保管場所の確保等に関する法律第十七条若しくは第十八条の罪に係る被告事件についての略式手続等による訴訟の記録であって仮納付の裁判の執行により略式命令又は交通事件即決裁判が確定したときに刑の執行を終えたこととなる事件に係るもの(正式裁判の請求があつた事件に係るものを除く。)については1年】

2 刑の免除、無罪、免訴、公訴棄却又は管轄違いの裁判により終結した被告事件の保管記録

(一) 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係るもの 【15年】

(二) 有期の懲役又は禁錮に当たる罪に係るもの 【5年】

(三) 罰金、拘留又は科料に当たる罪に係るもの 【3年】

3 その他の保管記録

(一) 再審請求事件の訴訟の記録 【再審請求に係る被告事件の裁判書以外の保管記録の保管期間が満了するまでの期間(その期間が3年未満のものについては、3年)】

(二) その他の保管記録 【3年】

 

3.②裁判所不提出記録


裁判所不提出記録については、当該記録に係る裁判書以外の保管記録又は再審保存記録(再審の手続のため保存することとされた刑事参考記録を含む。)の保管又は保存に従う(記録事務規程第23条)とされていますので、第2、2の「二 裁判書以外の保管記録」の整理に基づき保管されることになります。

 

4.③不起訴記録

 

不起訴記録については、記録事務規程第25条において、次のとおり、「不起訴の裁定をした日から起算して」、不起訴記録の各区分に応じて保管期間が設定されています。

 

不起訴記録の区分 【保管期間】

 

1 事件事務規程第75条第2項第16号から第18号まで、又は第20号の裁定主文に係る不起訴記録(第3号(2)に規定するものを除く。)

※参考 事件事務規程第75条第2項第18号:嫌疑不十分、同第20号:起訴猶予

(1)人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)について

ア 無期の懲役又は禁錮に当たる罪に係る事件のもの 【30年】

イ 長期20年の懲役又は禁錮に当たる罪に係る事件のもの 【20年】

ウ ア及びイに掲げる罪以外の懲役又は禁錮に当たる罪に係る事件のもの 【10年】

(2)人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪について

ア 死刑に当たる罪に係る事件のもの 【25年】

イ 無期の懲役又は禁錮に当たる罪に係る事件のもの 【15年】

ウ 長期15年以上の懲役又は禁錮に当たる罪に係る事件のもの 【10年】

エ 長期10年以上15年未満の懲役又は禁錮に当たる罪に係る事件のもの 【7年】

オ 長期5年以上10年未満の懲役又は禁錮に当たる罪に係る事件のもの 【5年】

カ 長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪に係る事件のもの 【3年】

キ 拘留又は科料に当たる罪に係る事件のもの 【1年】

2 事件事務規程第75条第2項第15号又は第19号の裁定主文に係る不起訴記録(第3号(2)に規定するものを除く。) 【5年】

3 次に掲げる不起訴記録

(1)事件事務規程第75条第2項第1号から第14号までの裁定主文に係る不起訴記録(本号(2)に規定するものを除く。) 【1年】

(2)道路交通法違反事件又は自動車の保管場所の確保等に関する法律違反事件の不起訴記録であって、区検察庁の検察官がした不起訴処分に係るもの 【1年】

 

第3 まとめ

 

1.刑事確定訴訟記録の場合

 

刑事裁判が行われ、刑事確定訴訟記録として保管する場合には、実際の裁判の結論に応じて1年~50年の範囲で定められています。

 

通常の人身事故であれば、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(略称:自動車運転死傷処罰法)(平成26年5月20日以降に発生した交通事故に適用されます。)第5条の「過失運転致死傷」罪が成立し、同罪の法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金とされています。

 

そのため、5年以上7年の懲役又は禁錮に処する判決であれば10年、5年未満の懲役又は禁錮に処する判決であれば5年、罰金に処する判決であれば3年が保管期間となります。

 

また、道路交通法違反の罪に係る被告事件についての略式手続等による訴訟の記録であって仮納付の裁判の執行により略式命令又は交通事件即決裁判が確定したときに刑の執行を終えたこととなる事件に係るものについては1年が保管期間となります。

 

2.不起訴記録の場合

 

過失運転致死傷罪の場合には、「長期5年以上10年未満の懲役又は禁錮に当たる罪に係る事件」のものとして、保管期間は5年となります。

 

しかし、単に道路交通法違反事件の不起訴記録であって、区検察庁の検察官がした不起訴処分に係るものについては、保管期間はわずか1年とされていますので、罪名や担当検察官の所属が保管期間に影響を与えることを理解した上で、十分に注意をする必要があります。

 

以上

(弁護士 武田雄司)

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